【最新】有価証券報告書の確認書制度が見直しへ|変更内容と上場企業がすべき対応

金融庁は2027年春にも内閣府令を改正し、有価証券報告書の確認書制度を見直す方針です。
今回の見直しでは、経営者などが開示手続を整備していることに加え、その手続きが実際に機能していることを確認した旨も記載する方向です。
そのため、企業側は確認書の文言を変更するだけでは十分ではありません。必要な情報をどの部門から収集し、誰が確認・承認するのかといった社内の開示プロセスを改めて確認しなければなりません。
本記事では、有価証券報告書の確認書制度がどのように見直されるのかを解説します。
あわせて、上場企業が確認すべき開示体制や内部統制、J-SOXとの違い、社内対応が難しいケースも紹介するので最後まで読んでお役立てください。
✓この記事でわかる内容
確認書制度の見直しに対応するには、開示実務や内部統制の知識が求められます。社内に専門人材が不足している場合は、外部のプロ人材を活用するのも選択肢のひとつです。
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有価証券報告書の確認書とは?

有価証券報告書とは、上場企業や一部の非上場企業などが毎年提出する法定開示書類です。財務情報だけでなく、事業内容や経営方針、リスクなども記載されており、近年は人的資本やサステナビリティに関する情報も開示されています。
有価証券報告書は、金融庁が運営するEDINETを通じて提出し、一般にも公開されます。投資家が企業の財務状況や経営状況を把握し、投資判断をするための情報源です。
この有価証券報告書とあわせて提出するのが「確認書」です。
確認書とは、有価証券報告書の記載内容が適正であることを確認した旨を示す書類のことを指します。代表者や最高財務責任者などが、有価証券報告書とあわせて提出するものです。
現行制度では、有価証券報告書の記載内容が適正であることなどを確認書に記載します。
今回見直されるのは、この確認書に記載する内容です。次章では、どのような変更が検討されているのかについて見ていきましょう。
有価証券報告書の確認書制度の見直しで何が変わる?

金融庁は、次のような有価証券報告書の確認書制度を見直す方針を示しています。
✓有価証券報告書の確認書制度の見直しポイント
今回の見直しでは、確認書に記載する内容が増えるだけではありません。経営者が開示手続きの整備状況や運用状況まで、確認することが求められる方向です。
以下、それぞれの変更点について詳しく見ていきましょう。
確認書に開示手続を整備していることの記載が求められる
1つ目は、開示手続を整備している旨を確認書に記載することです。開示手続とは、有価証券報告書に必要な情報を集め、確認や承認を実施する流れを指します。
例えば、どの部門から情報を集め、誰が内容を確認するのかを明確にすることです。その後、誰が承認し、経営者へ報告するのかも整理する必要があります。
経理部門が決算数値だけを確認すればよいわけではなく、非財務情報も含め、社内全体の開示プロセスを整えることが重要です。
開示手続が実際に機能していることも経営者が確認する
2つ目は、整備した開示手続が実際に機能しているかを確認することです。
規程や業務フローを作成していても、実際に運用されているとは限らないため、情報収集や確認、承認がルールどおり運用されているかを確認します。
経営者は、開示手続を整備するだけでなく、実際に機能しているかをチェックすることが大切です。
経営者は、社内でチェック体制を整えたうえで、情報収集・確認・承認の流れが適切に運用されているかを確認します。すべての情報を自ら確認するのではなく、開示手続全体が機能しているかを確認するイメージです。
経営者の開示への関与がより明確になる
3つ目の変更点は、経営者の開示への関与がより明確になることです。確認書制度は、適正な情報開示に対する経営者の意識を高めることも目的としています。
今回の見直しでは、有価証券報告書の内容だけでなく、開示手続の整備状況や運用状況も経営者が確認する方向です。
つまり、経営者は社内でチェック体制を整え、その仕組みが適切に機能しているかを把握する必要があります。
このように、開示手続の整備状況や運用状況まで経営者が確認することで、有価証券報告書の作成・開示への関与がこれまで以上に明確になります。
確認書の文言変更だけでは対応できない理由

今回の見直しでは、確認書に新しい文言を追加するだけでは十分とは言えません。
経営者が開示手続の実効性を確認するには、情報収集・確認・承認までの流れが適切に機能している必要があります。
そのため、確認書そのものだけでなく、社内の開示プロセスも見直すことが重要です。ここでは、確認書の文言変更だけでは対応できない理由を2つ解説します。
✓確認書の文言変更だけでは対応できない理由
理由①|有価証券報告書は複数部門の情報を集めて作るから
1つ目の理由は、有価証券報告書が複数部門から集めた情報をもとに作成されるためです。有価証券報告書には、財務情報だけでなく人的資本やリスク、サステナビリティ、ガバナンスなど幅広い情報が記載されます。
そのため、経理・財務部門だけで作成が完結するとは限りません。人事や法務、IR、経営企画など、複数の部門から情報を集める必要があります。
例えば、人的資本に関する情報は人事部門、法的なリスクは法務部門が保有しているケースがあります。このような情報を正確に集めるために、各部門が何を提出し、誰が内容を確認するのかを明確にしましょう。
理由②|有価証券報告書の完成後に確認するだけでは不十分だから
2つ目の理由は、完成した有価証券報告書だけを確認しても、作成過程の問題までは把握しにくいためです。
例えば、元となる情報に誤りがあれば、その内容が有価証券報告書にも反映される恐れがあります。また、必要な情報が担当部門から集まっていない場合や、誰が確認するのか決まっていない場合もあります。
このような問題を防ぐには、有価証券報告書が完成した後だけでなく、情報収集・確認・承認の各段階でチェックすることが重要です。作成途中で誤りや確認漏れを発見できれば、提出前に修正でき、正確な情報開示につなげられます。
そのため、作成から提出までの流れを整理し、各段階で適切に確認できる体制を整える必要があります。
有価証券報告書の確認書制度の見直しに備えて企業が確認すべき点

確認書制度の見直しに備えるには、自社の開示手続が適切に機能しているかを確認することが重要です。特に、情報収集から確認・承認までの流れが明確になっているかを見直す必要があります。
ここでは、企業が確認しておきたい4つのポイントを解説します。
✓確認書制度の見直しに備えて確認すべき点
有価証券報告書に必要な情報を収集できるか
まずは、有価証券報告書に必要な情報を社内から適切に収集できるか確認しましょう。
人事や法務、IR、経営企画など、関係部門ごとに保有している情報を整理します。そのうえで、誰が、いつまでに、どの情報を提出するのかを明確にしておくと進めやすいです。
情報の提出元や期限が曖昧だと、必要な情報が揃わないケースがあります。そのため、誰が・何を・いつまでに提出するのかをあらかじめ決めておくことが大切です。
情報収集のルールを整えておけば、必要な情報の抜け漏れを防ぎやすくなります。担当者が変わった場合でも、同じ流れで情報を集めやすくなります。
集めた情報の確認・承認ルールが明確か
次に、各部門から集めた情報を誰が確認し、誰が承認するのかを整理します。
例えば、人的資本に関する情報であれば、人事部門が内容を確認し、責任者が承認するといった流れです。その後、どの段階で経営者へ報告するのかも決めておきます。
確認・承認する担当者が曖昧だと、確認漏れが起きたり、特定の担当者に判断が集中したりしかねません。
役割分担を明確にしておけば、誰がどこまで確認したのかを把握しやすくなります。担当者が変わった場合でも、同じルールに沿って確認・承認を進めやすくなる点がメリットです。
開示手続が実際に運用されているか
開示手続を定めていても、実際の業務でそのとおり運用されているとは限りません。
情報収集・確認・承認が決めた流れに沿って進んでいるかを確認しましょう。情報に誤りがあった場合や、期限までに集まらなかった場合の対応方法も決めておく必要があります。
例えば、誰が修正を依頼し、修正後の内容を誰が再確認するのかまで明確にしておくと安心です。
このような運用状況を確認できるようにしておけば、経営者も開示手続が実際に機能しているかを把握しやすくなります。あわせて、確認内容や修正対応の履歴を残しておけば、問題が起きた際にも経緯を確認しやすくなります。
制度改正や組織変更に合わせて継続的に見直せるか
開示手続は、一度整備すれば終わりではありません。制度や社内の状況が変われば、必要な情報や確認方法も変わる可能性があります。
例えば、法改正によって開示項目が追加された場合は、新たに情報を収集する部門や確認担当者を決める必要があります。組織変更やM&A、新規事業の開始によって、情報を保有する部門や報告経路が変わるケースもあるでしょう。
このように、制度改正や組織変更に合わせて開示手続を見直すことで、情報漏れや確認不足を防ぎ、適切な開示を続けやすくなります。
有価証券報告書の開示体制を整えるうえで知っておきたい開示統制

有価証券報告書の開示体制を見直すうえで、理解しておきたい考え方が「開示統制」です。開示統制とは、有価証券報告書などで必要な情報を適切に収集・確認・承認し、正しく開示するための社内の仕組みを指します。
対象となるのは、財務情報だけではありません。人的資本やサステナビリティ、事業リスクなどの非財務情報も含まれます。
今回の確認書制度の見直しでは、このような開示手続を整えるだけでなく、実際に機能しているかを確認することも重要です。
ここでは、似た言葉である「内部統制」や「J-SOX」との違いを整理します。
開示統制と内部統制の違い
内部統制とは、企業が事業を適切に運営するために整える幅広い仕組みです。業務を効率的に進めることや法令を守ること、資産を適切に管理することなども内部統制に含まれます。
一方、開示統制は、一般に外部へ開示する情報を適切に作成・確認するための仕組みのことです。例えば、有価証券報告書に必要な情報を各部門から集め、内容を確認し、責任者が承認する流れなどが該当します。
つまり、内部統制が企業活動全般を対象とするのに対し、開示統制は情報開示のプロセスに重点を置いている点が違います。
開示統制とJ-SOXの違い
J-SOX(ジェイソックス)とは、財務報告に係る内部統制を企業が評価し、その結果を報告する制度です。主な目的は、財務報告の信頼性を確保することにあります。
一方、今回の確認書制度の見直しでは、財務情報だけでなく、有価証券報告書に含まれる非財務情報の開示手続も重要です。
そのため、J-SOXに対応している企業でも、それだけで今回の見直しに対応できるとは限りません。人的資本やサステナビリティなども含め、有価証券報告書全体の情報収集・確認・承認の流れを改めて確認する必要があります。
確認書制度の見直しへの対応を社内だけで進めるのが難しいケース

確認書制度の見直しに備えるには、制度内容を把握するだけでは不十分です。自社の開示プロセスに落とし込み、実際に運用できる体制をつくる必要があります。
一方で、開示実務や内部統制に詳しい人材を十分に確保できている企業ばかりではありません。既存業務を抱えながら体制整備を進めることで、担当者への負荷が大きくなることもあります。
ここでは、自社の人員だけでは見直しを進めにくい代表的なケースを3つ紹介します。
✓社内だけで対応を進めるのが難しいケース
ケース①|開示実務に詳しい人材がいない
1つ目は、有価証券報告書の開示実務に詳しい人材が社内にいないケースです。確認書制度の見直しに対応するには、開示手続や内部統制などの知識も求められます。
制度の変更内容を理解できても、自社の開示体制にどう反映すればよいか判断できない場合があります。例えば、どの部門の手続を見直すべきか、どのような確認体制が必要かを判断するには専門知識が必要です。
ケース②|複数部門を横断して体制を整備できる人材がいない
2つ目は、複数部門を調整しながら開示体制を整備できる人材がいないケースです。有価証券報告書の作成には、経理・財務だけでなく、IRや人事、法務なども関わります。
部門ごとに情報管理や確認ルールが異なる場合、特定部門だけでは開示プロセス全体を整えにくいため、全社で役割分担を整理しなければなりません。
関係部門の意見を整理し、共通のルールや確認方法を設計できる人材が必要です。
ケース③|現状の開示プロセスを評価・改善できる人材が不足している
3つ目は、現在の開示プロセスに問題がないかを評価できる人材が不足しているケースです。既存の手続きを長く運用していると、確認漏れや属人化などの問題に社内では気づきにくい場合があります。
例えば、特定の担当者に業務が集中していたり、承認ルールが曖昧だったりするケースです。確認書制度の見直しに備えるには、現在の情報収集・確認・承認の流れを客観的に評価する必要があります。
また、課題を洗い出すだけでなく、改善策を設計して実際の運用まで落とし込むことも重要です。役割分担や確認ルールを見直し、日常業務に組み込むことで、確認漏れや属人化の再発を防ぎやすくなります。
このような人材が社内にいない場合は、外部の専門家やプロ人材から支援を受ける方法がおすすめです。必要な知見を補うことで、制度改正への対応方針を整理しやすくなります。
タクウィルプロには、財務・法務などの領域に知見を持つプロ人材が登録されています。会計基準の変更や企業ガバナンス改革など、専門性が求められる課題にも対応可能です。
開示体制の見直しや社内プロセスの整備を自社だけで進めるのが難しい場合は、必要な期間だけプロ人材の知見を活用できます。
まとめ

有価証券報告書の確認書制度では、開示手続の整備や実効性についても経営者が確認する方向です。そのため、確認書の文言を変更するだけでなく、情報収集・確認・承認までの流れを見直す必要があります。
特に、開示実務に詳しい人材がいない場合や、部門横断で体制を整備できない場合は対応が困難です。
自社だけで対応を進めるのが難しい場合は、専門知識を持つ外部のプロ人材の活用を検討しましょう。
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この記事の監修者

-
株式会社エスプール
ヒューマンキャピタル事業部 ニアバウンド支援部 部長
株式会社エスプール新卒入社。主幹事業である人材派遣事業を経て、ヒューマンキャピタル事業部へ配属。スタートアップ向け営業支援サービスの営業リーダー就任後、個人売上高3億円を達成。人脈を活用した大手企業開拓手法「ニアバウンド」を発信。
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