人事が会社内で果たす役割とは?近年の動向を踏まえ解説!
「人事」と聞くとどのような印象を持つでしょうか。
企業運営には欠かせない人事の役割について今回は扱います。
1. 人事とは
人事管理の目的
人事の大きな目的は、企業における働き方のルールや処遇を決めて適切に運用し、人材を効果的に活用していくことです。(=人事管理)
また、近年は労働関連法規の改正が頻繁に行われているため、それらに適切に対応することも求められます。
いずれにせよ重要なのは、社員のモチベーションを向上させ、より良いパフォーマンスを発揮させることです。
それが達成されるならば、組織全体の生産性もおのずと向上するはずです。
企業としての最終目的は企業の持続的成長と安定的収益体質を実現することです。
人事とは、その目的のための縁の下の力持ち的役割と言えるでしょう。
そういった中で、近年の人事管理の動向を見ると、働き方改革の推進やワーク・ライフ・バランスが求められてきていることは周知の事実です。
働き方のルールや処遇に関して、個別対応も含めて、柔軟な対応を取るケースが増えています。
この対応の根底には、社員の持つ能力・スキルを十分に発揮してもらおうとする、企業(経営)側の考えがあります。
人は単なる労働力ではなく、一人ひとりが豊かな感情や個性を持つ人間です。
雇用に至るまで、実際に雇用されている最中、様々な背景を抱えた社員がいます。
そのため、現在は個性を重視した人事管理が推奨されているのです。
2. 人事の機能・役割について
1)人材採用
労働市場は売り手市場(深刻な人手不足状態)が続いています。
しかし、中小企業の新卒採用に関して、2024年卒の求人倍率はコロナ禍前の水準に徐々に戻ってきています。
また、中途採用や外国人採用に関して、社長が自ら地銀・中小企業支援センターなどのネットワークを活用し、優秀な人材を確保するなどの採用活動を行っている例があります。
人事部は、そういった採用において事業目標の達成のために必要な人員の計画を立て、人材を確保するための業務を行います。
具体的には、応募者の面接はもちろん、就活生や求職者に自社を広く知ってもらうための企業説明会、近年はオンラインでの説明会も主流となっていますね。
従来通りの求人サイト上での企業説明、ソーシャルメディアの活用、社員による知り合いの紹介等、自社の認知度を向上させる方法は多岐にわたっています。
また、マッチングサイト等によって企業が人材をスカウトする事例も増加してきています。これは中途のみならず、新卒採用市場においても近年活用されており、ますます採用活動は苛烈になっていくでしょう。
現代社会において、特定の活動だけではなく、様々な採用手法をとることが人事には求められていると言えるでしょう。
2)人材配置
さて、採用した人材をどこに配置するのか、人材配置の最適化は企業にとって非常に重要なテーマです。
人材配置によって、社員のパフォーマンスや生産性は変わってきます。仮に割り当てられた部署や取り組む仕事内容が合わなければ、モチベーションの低下、最悪の場合離職につながる可能性もあり、慎重に行う必要があります。
人材配置は、成績や勤務態度、スキルだけでなく、性格なども考慮して決めることもあります。
過去の人材配置のデータが蓄積されていれば、「過去いた社員がこの部署で成績を残せたのであれば、その社員と近しい特徴や性格を持つ人を、その部署に配属した方が、この社員のパフォーマンスの向上を図ることができそうだ」というように、より良い人材配置を考えることができるでしょう。
3)人事評価と処遇
人事評価は「成果」「能力」「人間性」など多岐にわたる項目から決まり、今後の仕事内容や人材配置に大きく影響します。その評価を適正にするために、360度評価といった周りの社員がその社員の人物像を評価する評価方法も近年では注目されています。よって、人事部や上司の感覚や経験による評価だけではなく、あらゆる視野からの評価が求められています。
こうした人事評価はある一点だけのデータではなく、多角的に蓄積していくことで、社員一人ひとりの成長過程の可視化にもつながります。
人事評価の結果は、社員の処遇(昇進・昇格、昇給など)の決定、一人ひとりの能力開発や最適な人材配置に活用することができます。
4)人材育成・能力開発
人事部は人材育成を目標として、仕組みや制度を整える業務を行います。
例えば、研修を計画し実行すること、社内でのジョブローテーションや、社内公募制度を設計することなどです。前述の評価制度の整備も、企業の求める行動や考え方を評価する仕組みを設計することなので、これも人材育成の一つと考えられています。
また人事部は社員の能力開発に投資する機能を担っています。
社員とは企業が最大の利潤を達成するための“ヒト”という経営資源ですから、人事はこの経営資源が陳腐化しないようにする必要があります。
例えば、役職に応じて研修を設定する、外部セミナーを利用できる制度を整えるなど、人事は “ヒト”に対しても能力開発という投資を行います。
5)人材活性化とモチベーション管理
人事の仕事として、社員が明朗快活と働くための環境づくりも人事の仕事に含まれます。社員同士の関係性を良くするためのイベント企画や、社内報など、コミュニケーションを促進する仕組みづくりを行います。
モチベーション管理は、社員のモチベーションデータを収集・蓄積して、社員コンディションを健全に保つことを目的としています。その蓄積されたデータからデータ分析を行い、その結果からフォローアップを行います。キャリア相談を行うことは人材活性化の有用な施策となり、結果的には生産性向上や離職防止につながります。
また、モチベーション管理は、社員の組織エンゲージメント(会社に対しての愛着心、思い入れ)に直結し、組織運営が健康か不健康かの指標にもなります。
6)労務管理
人事部の役割として、企業全体の賃金管理を行う労務管理機能(保険手続、給与計算、健康診断、福利厚生など)もあります。大企業においては労働組合との折衝も重要な役割です。
“ブラック企業”が社会的な問題として取り上げられるように、長時間労働による労災認定のリスクや民事上の責任論が高まってきている昨今においては、企業として安全配慮義務を果たしていることを担保しておくことが求められています。
企業独自の残業時間基準を設けて、その基準を超過する残業を行っている社員については個別面談の実施、対象社員の業務内容の棚卸し、部門長からの意見聴取など、「リスクヘッジ機能」も併せ持つようになってきており、単純に労務管理をしているだけではなくなってきています。
因みに、「労務管理」は労使の雇用関係について特化した「労働条件」の管理のことを指すため、人材の処遇全体をカバーする「人事管理」とは、持つ意味合いが大きく違います。
3. 採用の変化
現在日本ではコロナ後のインバウンド需要の高まり、社会構造の変化による雇用形態の多様化が生じています。一方、企業側の採用担当者は、ハローワークなどの人材紹介や求人広告サービスだけに頼っていても、優秀な人材は獲得することができません。今後は、優秀な人材獲得ができる新しい人材サービス(プロ人材サービス、AI活用人材マッチングサービスなど)など幅広く活用していく必要があります。
また、時短勤務やテレワーク勤務など社内の勤務形態の整備も必要になってきます。
ここで、戦略人事という概念を紹介します。
戦略人事とは、経営戦略と人事(人材)マネジメントを連動させることによって、自社の競争優位の実現を目指そうとするものです。従来のオペレーションを中心とした人事部門の在り方に対して、変化の速いこれからの時代に求められる人事部門の新たな役割として注目を集めています。
法的対応が求められ、ルーチンの安定的なオペレーション業務が多いのは人事部門の特徴です。一方で、大胆かつ適切な人材マネジメントを行うことによって、戦略人事として経営戦略に連動し、その目標を実現する“要”の役割を果たす必要があります。変化の時代にあっては、経営戦略に合わせた人材の採用と適正配置、プロジェクト管理、人材開発などを通じて、経営戦略の推進を支援する“戦略推進部門”としての役割が、現在人事部門には求められています。
戦略人事の事例として、あるデザイナーが新規事業開発室へ異動した事例があります。その自動車会社のデザイナーは、これまで主にクルマのスタイリングの役割を担ってきました。この自動車会社ではそのデザイナーの持つ能力を活かし、新規事業開発室への異動をすることで、企業イノベーション活動(新規事業創出や企業変革の推進役)を推進しました。
- ある企業の人事評価改善例
実際に人事制度の改善に成功した例をご説明します。ある製造業では、従来の人事評価制度は、人事関連規程が古く継ぎ接ぎで時流(労働関連法規の改正)に適合しておらず、明確な評価制度・基準もなく、“やってもやらなくても同じ”との社員のマインドが充満していました。
しかし、今回人事制度を見直すにあたり、「納得性」、「透明性」を基本方針として、本人で行動目標(コンピテンシー)を立て実践、自己評価と上司との面談評価により、妥当性と納得感のある活動評価と処遇(昇給・昇格など)を決定することとしました。
その結果、社員が自己啓発や能力開発へ積極的に取り組めるようになりました。
やる気や成果を上げた人手厚く評価され、何をどうすれば評価されるか社員が理解し、モチベーションアップにつながっています。
4. まとめ
経営環境が目まぐるしく変化する中、これからの人事管理は、社員一人ひとりが働き方やキャリアパスを選択できるような「多様性」と「柔軟性」を持ったものへと変革しなければなりません。それぞれの会社が自社の企業ビジョンや事業戦略の実現のために、アンテナを常に張り、時代に沿って人材という宝を腐らせないために、常に人事は考え続けなければならないということは自明です。
また、企業は社会を構成する一員であることを忘れてはなりません。法令を遵守する、雇用の維持・拡大に努めるなど、企業は社会に対して一定の責任を担っていることを忘れてはいけません。このような企業の社会的責任(CSR)を果たすことも、これからの人事管理を行う上でこれまで以上に欠かせない要素と言えます。
そのためにも、コンプライアンスを重視した人事管理のあり方を各社が創り出し、適切に運用していくことが重要です。
5. タクウィルは人材強化をご支援いたします
今回紹介させて頂いた人事の役割、いかがだったでしょうか。
とは言え、急速に社会が変化する一方、SDGs、CSR等時代の潮流に沿った社内制度の改革というのは非常に困難であり、人事制度評価を刷新、見直すための知見が不足しているという企業様は非常に多くいらっしゃるかと思います。
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