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【連載第六弾】なぜあなたの製品は選ばれないのか生成AIの悪循環:あなたが「中央値」のビジネスパーソンで終わる理由

北川 裕康(マイクロソフト元業務執行役員)

AIが急速にビジネス環境に浸透するなか、人間との役割分担について議論されています。「ルーチンワークはAIに任せてしまって、人間はより白黒はっきりしないような判断を行う仕事をすべきだ」という意見が大勢ではないでしょうか。

そうかもしれませんが、ここに矛盾があります。AI時代にこそ、あえて『無駄』に見える泥臭い経験が必要な理由を述べたいと思います。

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この記事の監修者

北川 裕康
北川 裕康
AI inside株式会社 執行役員 CPO、マイクロソフト株式会社 業務執行役員、シスコシステムズ合同会社 マーケティング本部長など、外資系企業を中心にキャリアを積み、独立後はIT/SaaS/AI企業におけるGTM戦略の立案、マーケティング・セールスプロセスの構築、およびパイプライン作成を主に支援。
Great Place To Workのプロジェクトをリードするなど、企業文化の構築にも関与し、現在はマイナビニュース Tech+にてスキル・キャリアに関する連載を執筆中。

スキルとセンス

この2年くらい悩んでいたことがあります。それはリーダーシップについてです。長年、リーダーシップはスキルだと、後天的なことで努力すれば身に着けることができるという立場でした。しかし、スキル以外のこともあるよなと、もやもやしていたのです。書籍「センスは知識から始まる」と楠木建教授の講演内容から、センスという考え方を取り入れることですっきりしました。リーダーシップのみならず、仕事のすべてにスキルとセンスが必要だということです。日々の業務でリーダーシップを発揮するのは、人の管理を含めて状況の判断が難しい場面が多いからです。

スキルとは測れることで、学習と訓練によって誰もが習得・向上させることができ、他人に教えることが可能な「目に見える能力」です。一方でセンスは測れないことで、蓄積された経験や洞察に基づき、白黒はっきりしない複雑な状況下で、最適解を瞬時に見出す「感覚的な能力」です。どちらも知識と経験をすれば身につくものですが、スキルの先にセンスがあります。センスは特に、失敗からフィードバックを得て学ぶ必要ありです。白と黒を、経験から知るということです。ですから、まずはスキルを身に着ける必要があるのです。

スキルの空洞化

上記で何か矛盾かというと、人間が生き残りに必要なセンスは、AIが置き換える仕事のスキルがないと身につかないということです。スキルは測れることだから、AIに置き換えられるからです。ああ無常です。たとえば、ソフトウェアの開発を考えてみてください。コードを書けない人が、どうやってコードを吐き出すAIを操って、ビジネス求められる成果物を作り出すことができるでしょうか。今は、センスのある人がリードしているので問題ないですが、AIが普及するとそのようなセンスのある人が減る可能性があるのです。私はこれを、スキルの空洞化による生成AIの悪循環とみています。

生成AIは中央値であり、信頼感に課題

経営戦略の楠木建教授は、生成AIの結果は中央値だとおっしゃいます。綺麗な中央値で、すごく納得感のある生成物を出してくれます。しかし、みんなが同じような結果を使う可能性がでてきます。たとえば、最近のセミナーではタイトルに、「羅針盤」や「次の一手」というキーワードを使っていることが多いです。これは明らかに生成AIに出させているのだと思います。

センスというか、アートな能力で、他者とは違うが、かっこいい仕事をする必要があるのです。私は、これを外れ値といっています。私は、例えばセミナータイトルでは、生成AIに候補は出してもらいますが、そこにため込んだ知識で自分なりの言葉のリストを作り、そこから最高のものを選んでいます。生成AIの結果だけに任せっきりにしません。

生成AIは壁打ち相手としては世界最強です。でも、戦略面で便り過ぎると中央値=他社と同じになりかねないので、生成AIへの過信は禁物です。また、プロセスに応用するときも注意です。グチャグチャなプロセスで自動化しても、ゴミが自動化されるだけです。まずは業務の整理です。

その他の大きな課題は、生成物への信頼度です。Gartnerのセールスリーダーの調査を見ているいと「B2B買い手の73%が、生成AIによって生成されたと知っている情報には信頼を置いていない」(出典:Gartner The Chief Sales Officer Quarterly First Quarter 2026)との報告がありました。私も同感です。私は、明らかにGensparkで作成されたスライドやNotebookLMで作成されたインフォグラフィックは無視します。というか心に響かないですね。

知識やスキルは段階的に定着

みなさんは学習ピラミッドってご存知ですか?

学習ピラミッドとは、アメリカ国立訓練研究所(NTL)が発表したとされる、どのような学習方法が、どれくらい記憶に定着しやすいかを数値化して示した図のことです。%でピラミッド構造になるのです。ちなみにこの図は、生成AIを使って作っています。

受動的な学びよりも能動的な学び(アウトプット)の方が圧倒的に、学習効率が高い、という考え方に基づいています。新婚の皆さんには恐縮ですが、講義はハネムーン効果と言われており、すぐに忘れています。他任に教えるということで、定着率が最大になります。私はよく言うのですが、私は独立して人にアドバイスをするようになってからの多くの成長をしたと実感しています。

お判りいただけるように生成AIは視聴するへの貢献でしかないのです。

センスを身に着ける方法

とあるAIベンチャーのCEOとの話しです。「北川さんは休暇のときに何するのですが?」と言われたので、「私は書物を読んだり、執筆をしたりしています」と答えました。そうしたら、「そんなの無駄ですよね。生成AIでプロンプトを書けばすぐに教えてくれますよ」と言われました。生成AIは答えを出してくれるかもしれませんが、考える機会を奪います。それではセンスはつかないと私は思います。書物を読むというのは、作者との沈黙の対話です。そこであれころと考えを巡らせることで、センスがつくのだと考えます。まずは、しっかり読書をすることを私はお薦めします。

楠木建教授の書籍「楠木建の頭の中 仕事と生活についての雑記」では、大学の教育についてですが、次の順番で習得する必要があると記載されています。

これを仕事に応用すると、まずは①プロの仕事を突き詰め、②リーダーシップを身に着け、そして、③経営のセンスを身に着けるということです。

生成AIが普及しようと、泥臭く業務の経験を積まないとスキルやセンスは身につかないです。ですから仕事に手を抜くことはできません。もっと大事なことは、深く考えることです。もちろん生成AIをうまく活用するべきですが、それに頼っていては、キャリアがやばいということです。

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北川 裕康
北川 裕康
AI inside株式会社 執行役員 CPO、マイクロソフト株式会社 業務執行役員、シスコシステムズ合同会社 マーケティング本部長など、外資系企業を中心にキャリアを積み、独立後はIT/SaaS/AI企業におけるGTM戦略の立案、マーケティング・セールスプロセスの構築、およびパイプライン作成を主に支援。
Great Place To Workのプロジェクトをリードするなど、企業文化の構築にも関与し、現在はマイナビニュース Tech+にてスキル・キャリアに関する連載を執筆中。

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