COLUMNタクウィルコラム

株式会社農林中金総合研究所 元理事研究員が語る金融リスクからサステナビリティを読み解く実務の本質とは

農林中央金庫グループで長年にわたりリスク管理を専門にキャリアを築いてきた高島顧問。

金融機関のリスクマネジメントを支えてきた経験を基盤に、現在はサステナビリティ開示支援の分野で企業を支援しています。

パリ協定以降、金融の現場にも環境・社会リスクへの対応が求められる中、実務で培った分析力と制度設計の知見を活かし、企業の現場が“動ける仕組みづくり”を重視してきました。 今回は、そんな高島顧問のキャリアの歩みや転機となった経験、支援実績と学び、そして未来の展望について伺いました。

これまでの歩み

金融とサステナビリティをつなぐ実務家としての挑戦

農林中央金庫グループで長年、リスク管理分野の専門家として歩んできた高島顧問。

キャリアの後半には、グループのシンクタンクである農林中金総合研究所に異動し、調査・分析・政策提言を担いました。

特に2015年のパリ協定を機に、気候変動と金融リスクの関係に着目したといいます。

「それまでサステナビリティ分野に精通していなかったのですが、金融業界全体で避けて通れない課題だとすぐに気づきました」と語ります。

そこで、総合研究所の理事研究員として、農林中央金庫に対し、国際金融規制に関する知見を活用してリスク管理高度化への助言を行ってきました。

また、自然関連財務開示(TNFD)に関する分析方法におけるサポートも行ってきました。 さらに、国際的なルールメイキングの一環で、TNFDタスクフォースメンバー・オルタネイトとして、2023年9月のTNFD最終化にも貢献しています。

転機となった経験

バーゼル規制対応の現場で学んだルール設計の重要性

高島顧問のターニングポイントは、国際的な金融規制「バーゼル規制」への対応でした。

「リスク管理の基盤をどう整えるか。ルールがなければ人は動けないし、ルールがあれば人は動く。そこに気づけたのは大きかったです」と振り返ります。

リーマン・ショック以降、厳格化された金融規制を実務でどう運用するかを模索する中で、“納得感のあるルール設計”の重要性を学びました。

「相手が理解し、納得して初めてルールは機能します。制度は人を縛るものではなく、動かすものだと考えるようになりました」と語ります。

この経験が、後のサステナビリティ開示支援(TCFD・TNFD)の礎となりました。

「気候変動も自然資本も、根底はリスクの話。感情ではなく、論理で支援するのが自分のスタイルです」と強調します。

支援実績と学び

TNFD開示を実践的に支援――企業が動く仕組みをつくる

近年では、TNFD(自然関連財務情報開示)対応を軸とした支援を行っています。

環境コンサル会社の自然関連顧客支援プログラムのブラッシュアップのための助言や、同社が運営するウェビナーにて、TNFDについて講師として登壇するなどの支援を行ってきました。

また、建設業界向けにITソリューションを提供する企業様のご支援では、講師としてセミナーに登壇し、建設業界におけるCO2削減や脱炭素への取り組みに関する知見をお伝えしました。

「セミナー実施にあたり、コンテンツの企画段階から携わり、登壇資料の作成や講演までを一貫して携わりました」と振り返ります。

支援の現場では、経営層への説明と現場理解のギャップを埋めることを意識しています。

「自分たちの事業が“自然環境の視点から見てどうか”という視点に変えるだけで、社内の議論が前に進みます」と語ります。

実際、支援を通じて「分析結果を見て初めて、自社がどの領域で自然と関わっているのか分かった」という反応も多いといいます。

「自分たちでは気づけなかった視点を提供する。それが私の支援の価値です」と強調します。

未来への展望

金融の知見を武器に、実務で企業の変化を導く

高島顧問は、今後も「現場で役立つ支援」を何より重視しています。

「専門的な理論を語るよりも、企業や人が実際に動けるような支援を心がけています」と語ります。

自身の強みは、金融の現場で培った“仕組み化と翻訳の力”にあるといいます。

「会計や法務などの専門家は、それぞれの分野で非常に優秀です。私はむしろ、その内容を企業の現場が理解できる形にかみ砕き、実務で使えるように整理する立場でいたい」と話します。

また、「困っている企業を助けたい」という想いが高島顧問の原点にあります。 金融出身ならではの冷静な視点で、環境保護活動の理念にとらわれず、企業の変化と成長を支えていきます。

まとめ

金融機関で長年培ったリスク管理の知見を基盤に、サステナビリティ領域で実務的な支援へと軸を広げてきた高島顧問。

制度設計から企業支援まで一貫して“現場で機能する仕組み”にこだわり、企業の納得感と再現性を重視してきました。

理念や理想を語るのではなく、企業が実際に前進できる現実的な支援を行うこと。

その信念のもと、これからも中小企業をはじめとする多様な企業の成長を支え、金融とサステナビリティの橋渡し役として新たな価値を創出していきます。

この記事の監修者

清水 聖子
清水 聖子
清水 聖子
株式会社エスプール
ヒューマンキャピタル事業部 ニアバウンド支援部 サービス推進グループ

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