COLUMNタクウィルコラム

株式会社リコー 元新規事業部門 組織長が語る 360度カメラを生み出した社会貢献起点のビジョン先行型事業開発とは

アルバイトからスタートした販売の現場、商品企画でのものづくり、そして経営企画室での戦略立案──株式会社リコーで多様なキャリアを歩み、新規事業開発でも数々の成果を残してきた生方顧問。

既存事業と新領域を横断しながら価値を生み出してきた経験は、今まさに変革期を迎える製造業界にとって示唆に富んでいます。

これまでの歩み

バブル期に飛び込んだメーカー営業から、新規事業・ものづくりの最前線へ

生方顧問のキャリアは、バブル期に始まります。

当時はアルバイトとして家電量販店でワードプロセッサーを販売し、大学生ながら全国売上1位を2年連続で達成。メーカーから声がかかり、株式会社リコーへ入社しました。

入社当初は営業職としてコピー機やファクスなどBtoB商材を販売していましたが、販売現場で培った知識が評価され、文系出身ながら異例の抜擢で商品企画部門へ異動します。

「ものづくりに関わる仕事をやりたいという思いは、学生時代から漠然とありました。
キャリアスタートのタイミングで商品企画、ものづくりに携わるチャンスをいただけたのは大きな転機でした」と振り返ります。

そこからOEMによる企画を皮切りに、社内で立ち上がった電子学習系の新規事業プロジェクトに参画し、大ヒット商品を生み出しました。

「国内外の販売チャンネルをつくるだけでなく、企画・設計から販売・アフターサービスまで事業全体を組み立てる必要がありました。
その後も商品企画事業化推進の担当として、プロダクトをもとにゼロから事業を組み立てる新規プロジェクトを数多く経験したことで、自然と“事業一式をつくる視点”が身につきました」と振り返ります。

その後は社長直轄の経営戦略部へ。 コーポレートブランディングを推進しながら、経営管理スタイルを財務中心から顧客視点へ転換するため、バランストスコアカードの活用促進に向け、様々な部門での展開を支援しました。

また、長期経営戦略や中期経営計画の策定リーダーも務め、社長や各事業部トップと直接議論を重ねながら、経営の骨格がどのように大組織に展開され、管理されていくのかを実務を通して経験し、学びました。

また、SDGsの先駆けとなるCSR領域にも早期から着手。
日本企業として初めてCSR室を立ち上げ、社会的責任への対応を組織として整備するなど、本社機能の立ち上げにも携わりました。


製造業の可能性を解き放ち、新たな価値創出に挑戦

生方顧問の代表的な取り組みの一つが、360度カメラの新規事業開発です。

当時の社長から「コンシューマー事業を伸ばしたい」と声をかけられ、カメラ事業をベースとした新規プロジェクトのリーダーに任命されました。

社内のクロスファンクショナルチームを組成し、アイディエーション、技術検証、商品企画、事業戦略立案までを一貫して推進。
結果として、二眼構成による360度カメラの原型をゼロから開発し、特許を取得しました。

「デジタルネイティブ世代の登場によって、スマートフォンとSNSがもたらす画像コミュニケーションが大きく進化する時代が来ると考えていました。

だからこそ、空間全体を伝える新しい映像体験を提供したかったのです」と生方顧問は振り返ります。

その後はエンタメ領域への展開を目指し、リコーからカーブアウトして新会社を設立。代表として事業を牽引しました。
顧問となった現在は、こうした開発・経営・事業推進の知見を活かし、複数企業の新規事業支援に携わっています。

仕事への哲学

「世の中への貢献」から始まるものづくりの思考

生方顧問の哲学の根底にあるのは、「世の中への貢献」という明確な起点です。
商品開発や事業構築においても、まず「どのように社会や顧客に貢献できるか」を出発点としています。

このビジョン先行型の象徴が360度カメラの開発です。
当時、マーケットもニーズも存在しない中で、スマートフォンとSNSがもたらす“映像コミュニケーションの未来”を描き、そこから逆算して技術・デザイン・事業構造を組み立てました。

既存の調査では見えない未来を、仮説とビジョンから創る。
「ビジョン × 実装 × 社会貢献」という三位一体の視点こそ、生方顧問の仕事の哲学の中核です。

未来への展望

日本の製造業の潜在力を“解き放つ”ために

生方顧問は現在、日本の製造業が抱える構造的課題と可能性を見据えています。

「日本の製造業は今でも優れた技術と人材を持っています。しかし、そのポテンシャルを十分に表に出せていないのが実情です」と語ります。

背景には、企業の組織構造やリスク回避志向があります。

確実に利益を生むコア事業に資源が集中する一方で、不確実性の高い新規事業には踏み込みづらい体質が根強く残っており、こうした体質が、日本の技術の事業化を遅らせている現状を生んでいると指摘します。

生方顧問は、企業が本来持っている技術資産を活かし、新しい市場価値に変換するためには「ポートフォリオ経営」の視点が不可欠だと強調します。

「すべてを賭ける必要はなく、既存の収益と挑戦のバランスをとることで、製造業はもっと可能性を発揮できるはずです」と述べています。

日本の製造業の潜在力を“解き放つ”ために——生方顧問は、顧問業にとどまらず、自らも革新的な事業開発に取り組み続けています。

2022年に創業したエンタメテック系スタートアップ企業「コネキス株式会社」では、代表取締役CEOとして多視点VR映像体験の開発・リリースを手がけています。

「長期にわたる広く・深い実務経験と事業化実績を、これから出会う企業の新しい挑戦と向き合いながら、非連続な発想と着実な実行力によって、日本の製造業のポテンシャルが発揮される世の中を目指しています」と未来への展望を力強く語りました。

まとめ

生方顧問のキャリアと哲学は、日本の製造業が持つ潜在力を引き出すためのヒントに満ちています。

技術を社会につなげる“事業化の力”が、これからの企業成長を支える鍵となるはずです。 「世界で勝ちたい」「製造業のポテンシャルを解き放つ」──その想いが、生方顧問の実践の根底にありました。

この記事の監修者

清水 聖子
清水 聖子
清水 聖子
株式会社エスプール
ヒューマンキャピタル事業部 ニアバウンド支援部 サービス推進グループ

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